学会誌

ベンチャー企業におけるアメーバ経営の導入

中小ベンチャー企業へのアメーバ経営の導入は、高収益と高付加価値の両立をもたらす可能性が高いことが知られている。この点に関して、アメーバ経営の先行研究では、高収益を独自の管理会計システムの機能に、そして高付加価値を特異な経営理念の浸透を図る教育システムに対応させる形で説明してきた。しかし何故、厳密な管理会計システムの中で、従業員が高付加価値製品の開発に向かうのかについて、先行研究では一貫した説明を行う理論的視座に欠けていた。そこで本研究では、この課題を克服する為に、組織文化論の持つ理論的視座に基づき、独自の管理システムを構築し、運用する管理者行動に注目した分析視角を提示する。その上で、アメーバ経営を導入したベンチャー企業(株式会社ベアーズ)の事例分析を行うことで、高収益と高付加価値を両立する管理者行動を明らかにする。最後に、管理会計システムと経営理念を、それぞれ収益性と高付加価値に一意対応させてきた先行研究の理論的課題に対して、管理システムを前提として企業家の管理行動に注目することで、アメーバ経営が高収益と高付加価値を両立するメカニズムを論理一貫した形で説明できることの、理論的・実践的含意を明らかにする。

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