創業期の業績を高める取引関係の特徴
本稿では、創業期における取引関係(販売先との関係)と業績との関連を探る。分析には2006年に創業した企業を追跡したパネルデータを用いた。本稿の分析によると、取引関係は、商取引、非商取引の両面で創業期の企業の業績を左右する。商取引面に関しては、以前の勤務先の取引先を創業時に顧客として確保した企業や数多くの顧客を確保した企業の存続確率が高い。半面、顧客を確保して創業した企業の成長性は、顧客を確保せずに創業した企業と比べて高いとはいえない。この意味で存続条件と成長条件は異なり、創業後の取り組みが成長性を左右することが示された。一方、非商取引面に関して、創業後、既存の取引先に新規顧客の紹介を依頼した企業の成長性が高いことが確認された。信頼の不足に悩む創業期の企業にとって、既存の取引先への紹介依頼は新規顧客開拓の有効なツールとなりうる。