2006年 第1回清成忠男賞 受賞者・受賞論文
<受賞者氏名>長谷川 博和 氏(グローバルベンチャーキャピタル㈱代表取締役社長)
<受賞論文タイトル>「日本ベンチャーキャピタルのIRR向上の研究」
<掲載誌名・号・年>『日本ベンチャー学会誌 Japan Ventures Review』No.7、2006年
論文
<論文要旨>
ベンチャーキャピタルのパフォーマンス(IRR)を向上させるためには、どのような要因が寄与するだろうか。本稿では日米欧VCのIRRを比較した上で、1998年から 2002年に株式公開したベンチャー企業の増資とIPOの過程を検証することでIRR向上に寄与する要因について考察した。その結果、EXIT戦略を示すIPO時価増加率と追加増加回数はIRRと正の相関が認められ、IPOまでの月数、シンジゲーションを示す同時期VC数、バリュエーションを示す時価の増加率、Pre時価については逆相関が見られた。投資期間を示す創業からの月数、増資後のシェア、オーナー系、専門性とIRRは相関が示せなかった。
キーワード:日本のベンチャーキャピタル、内部収益率(IRR)、回帰モデル、系列別VC行動の違い
<Abstract>
What factors contribute to improve the return (IRR) on investments in venture companies? This paper investigates the factors influencing return performance of investments in venture companies in Europe, Australia and the U.S. Further, this paper investigates the valuation of Japanese venture-backed companies that achieved IPOs from 1998 until 2002 at each round of pre-IPO financing in order to determine those factors contributing to enhanced IRR in Japan. It was found that the correlation between the percentage increase in valuation between the last financing before the IPO and the IPO valuation, the times of following investments and investment performance was the highest of all factors investigated. On the other hand, factors such as whether the financing was syndicated, the level of valuation, had a negative correlation with IRR in Japan.
Keywords: Japanese venture capital, internal rate of return (IRR), regression model, institutionally affiliated venture capital
<受賞の言葉>
第1回の清成先生の賞をいただきまして、身に余る光栄だと思っております。私自身はずっと長年ベンチャーキャピタルという実業をしてきましたけれども、やはり実業だけではなくて、アカデミックなリサーチも、両方ともあることによって、日本のこの業界がよくなるんではないかということで、研究を今後も続けていきたいというふうに思います。この清成先生の賞を受賞したということに恥じないように、今後も研究を続けていって、最先端のビジネスと最先端の研究ということを、両方とも相乗効果でやっていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
<清成忠男氏挨拶>
一言ご挨拶申し上げます。こういう賞が設けられるということを聞きまして、びっくりいたしました。そんな賞を出すに値する人間ではないということは、自分がよくわかっておりますので、大変恐縮しておりますのと、それから大変光栄に存じております。
ベンチャービジネスという問題提起したのは36年前で、それは今日ここにいらっしゃる専修大学の平尾さんと、当時専修大学の教授だった中村秀一郎先生との3人で、決して私一人というわけではありません。
貢献したかどうかはわかりませんが、中小企業基本法が制定された翌年の昭和39年から現在に至るまで、中小企業審議会の委員を務めております。それで99年、小渕内閣のときに、中小企業基本法全面改正が行われ、これで長年思っていたことが通ったということです。これによってベンチャー支援に法律が近づいただろうと思います。
今日の3人の方、大変先端的なことをやってらっしゃるんですね。これに1つ新しいものを付け加えられたということで、大変感謝しております。そういうことでベンチャー学会にも御礼かたがたご挨拶とさせていただきます。受賞者の方、大変おめでとうございます。