いま、わが国において新産業創出の必要性が強まっている。
アジアや中南米諸国の経済発展、社会主義の解体・変質によって、市場経済が地球規模に拡大し、世界大競争時代が到来している。 こうした状況下で、先進諸国においては、いわゆる空洞化が進展し、新産業創出の必要性が強まっている。
しかも、わが国においては、生産機能の東アジアヘのシフトが著しいのみならず、既存産業の成熟化も進んでいる。他方、 情報通信技術の発達によって新しいビジネス・チャンスが拡大しつつあるし、また、福祉、環境、教育、防災など問題解決型の需要が拡大しつつある。 こうして、いま、新産業の創出は、必要であるし可能でもある。わが国で、官・民あげて新産業創出の支援ブ-ムが生じているのは当然である。
ところで、J.A.シュンペ-タ-が指摘しているように、「新産業の担い手は、新人であり、新企業」である。 まさに、ベンチャ一企業による企業家活動が重要なのである。 同時に、これまでわが国をリ―ドしてきた大企業においても、企業家活動が要請されている。
ただ、 現在のべンチャ-ブ-ムをたんなる一過性のブ-ムに終わらせないためには、企業家活動の理論的研究を深める必要があり、それをふまえた政策提案が重要な意義を有している。
そのためには、「日本ベンチャ一学会」を設立し、関係者のネットワ-クを形成することが必要であると考える。こうした趣旨からすれば、学会とはいえ、たんなる研究者の集まりではなく、企業、金融機関及び官庁の人々、さらには社会科学系のみならず自然科学系の人々にも参加を呼びかける必要があると考える。
新産業創出のために、いまわが国において必要なことは、企業家風土の形成を加速し、企業家文化の醸成をはかることである。 こうした趣旨を御理解のうえ、学会への参加を御願いする次第である。
1997年11月 清成忠男 日本ベンチャー学会特別顧問